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水樹は事務所の入り口の怪しさにこそ若干の嫌悪感を表していたが、いざ中に入るともう特に気にならないようだ。
ジュンは自分と奈緒の名刺を水樹に渡すと応接間(普段は寝室)のソファに水樹を座らせた。
「…で。突然ですけどその探してる人に関して手がかりとかはありますか?」
「手がかり……と言うべきかわかりませんがテレビで顔を見たことはあります。会ったことはないですけど」
「有名人ですか?ならその顔の特徴を聞くとこからかなぁ。ナオちゃん?」
奈緒は元気良く首を縦に振った。
「……じゃ顔の特徴を」
「ええっとですね。あ、紙とペンがあります?私、絵を書いたりするのが得意でして。似顔絵で説明します」
水樹はテーブルに紙を敷くとサラサラと絵を描き始めた。
「まず……頭は寝癖がついてだらしない感じ……目はトロ~ンとしてて眠そう。
鼻は割と高くて男前。それから口周りにうっすらヒゲが生えてたような……
あ、あと私が見たときはポテトチップスを……はい!こんな感じです!」
水樹は完成した絵を差し出した。
「ナオちゃん」
「ワタヌキさん」
「この人どっかで見たことあるよね?」
「私も毎日見てた顔の気がします」
よかった、ナオちゃんも同じ考えらしい。これで心置きなく突っ込める。
(これ…一郎さんじゃないか!)
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