第三章:帰還

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「ん?誰だお前は!?」 稲葉は思わず身構えて相手の姿を確認する。だがその扉を開いた相手が誰かわかったとき、体が急に震え始めた。 寝癖がついて好きな方を向いている髪の毛に今にも眠りにつきそうなぼんやりした目。 守谷に何度も見せられたことがある、最重要人物の男の顔が目の前にあったのだ。 「あれ……みんないないのか。おたくはどちら様?」 男は困ったように頬をボリボリ掻いたが、その目には生気が宿っていないため演技のようにも見える。 「か……神野 光……」 「………。神野 光じゃないんだけどなぁ。坂崎 一郎なんだけど。ところでどちら様?」 この男こそ、この事務所の主であり、守谷の最大の標的。 神野 光、そして坂崎 一郎だった。
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