第三章:帰還

8/10
前へ
/1017ページ
次へ
「……で、娘さん、探さなくても?」 あれから一時間。奈緒を探すどころか、ポテトチップの袋を開けてくつろぎ始めた一郎に桐生が訊ねる。 紹介が遅れたがこの男の名は桐生 大地(キリュウ ダイチ)。アメリカで一郎と知り合った“元”警官。 その桐生の質問に一郎は飄々として答える。 「探すって言ってもどこにいるかわからないですしね。こういうときはとりあえず、落ち着いて行動しないと。なにか事件に巻き込まれているようだし、何かあったら大変だ」 「落ち着きすぎなのもどうかとおもうが……」 しかしだからといってしつこく言い寄ってもこの男は簡単に考えを曲げるような男ではない。 まだ短い付き合いではあるが桐生はそれを知っていた。
/1017ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5207人が本棚に入れています
本棚に追加