第五章:上回る者

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一方、事務所。 電話を机の上に置くと、一郎は立ち上がり、荷物をビニール袋に詰め始めた。 「どうしたんだ?ビニール袋になんか荷物詰めて。今日はゴミの日じゃないぞ」 カップめんをすすりながら桐生が一郎の後ろに歩み寄る。一郎はせっせと荷造りをしながら答えた。 「今、奈緒ちゃんと電話が繋がってます。これからの向こうの会話で多分、みんなの居場所もわかるはずです。 桐生さんもいつでも出れるように準備してください。それと……」 「それと?何だ?」 一郎は額に手を当てると、絞り出すように言葉を並べた。 「奈緒ちゃんとの会話で……出てきたキーワードは……『守谷』。この守谷という人間が奈緒ちゃんらを連れ回してるみたいです。でも何か引っかかるんですよね……守谷……どこかで聞いた気が……」 桐生には一郎の“ひっかかり”に思い当たりがあった。すかさずその事を口にした。
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