第五章:上回る者

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「守谷という名前は俺も聞いたことがある。裏の世界では名の通った男さ。だがまあ……」 「言いたいことはわかります。それは電話を通して確認しましょう」 そう言うと2人は机の上の電話に耳を傾けた。もちろん桐生の言いたいこととは、奈緒達と一緒にいる守谷と、頭の中の守谷が同じ人間かどうかということだ。 しばらく聞いていたが、聞こえてくるのは車が揺れるような音のみ。ほかには何の音も入ってこない。 さすがに桐生も退屈してせわしなく歩き回ったりし始めた。 「こういう地味な作業が嫌いなところを見るとやっぱり桐生さんって捜査員に向いてませんね」 皮肉のこもった口調だったが、同時に感心もこもった口調だった。
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