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横から口を出そうとする桐生を手を出して制止しながら一郎は頭を回した。今、どんな行動を取るべきか。
相手の要求を聞かなければわからない。
一郎の頭はすぐにそう答えを出した。
「要求は?」
電話の相手がほくそ笑むのがわかる。
『あなたが持つ“金魚のナミダ”を譲ってもらう』
「いやいや僕は持ってないよ。警察が保管してるんじゃ?」
一郎がとぼけながらそう言うと相手は少し声を荒げた。
『全ての調べはついている。あなたの本名が神野 光だということも、金魚のナミダを所持しているという事も。実際、警察が保管していたのはプラスチックの偽物だった』
「へえ……結構調べてるんだね。まあこの状況なら答えは一つしかないか」
『その通り。君の答えは……』
『譲るしかない』
「譲らないしかない」
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