第五章:上回る者

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しばらくの沈黙。電話越しだが相手が予想外の返答に戸惑っている様がひしひしと伝わってきた。 その間に一郎は考えを整理する。 ジュン達が捕まっていること、居場所が分からないこと、そして相手は守谷 心だということ。 守谷という名に心当たりはあった。何年か前からその筋で名が売れてきた男。武器や麻薬の密売などを主な生業とし、その犯行はまるで警察の盲点をつくような綿密なものだった。しかしある時…… 『譲らないとはどういうつもりですか?』 一郎の思考を遮り守谷が訊ねてきた。イライラとしたやや荒い口調だ。 思った通りの返答……一郎は口元を緩ませた。 「“金魚のナミダ”は金庫に保管してるんだけど金庫の鍵を確か奈緒ちゃんか誰かに渡したままなんだ。だから金庫が開けられない」
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