第五章:上回る者

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『鍵を?………』 再び訪れた沈黙。守谷は何を考えて何を言ってくるだろうか。その全てを予想し、守谷の居場所を引きずり出さねばならない。しかし一郎は焦りはしなかった。なぜなら必ず守谷と対面できる自信があったから。 一方の守谷。彼は焦っていた。予想だにしない一郎の抵抗。人質がいると言っているのにも関わらず彼は「“金魚のナミダ”を渡す気はない」と言ったのだ。 人質に手を出されてもいいから?そんなはずはない。一郎からすれば先日、事務所に侵入されていたこともあるし、人質を殺せば次は一郎自身を捕まえて“金魚のナミダ”の在処を吐かせるだけでいいのだ。つまり人質は“死に損”となる。 この考えに至らないわけではないはずだ。ならばなぜ抵抗する?その行動の意味は? 守谷は押し黙って考えていた。
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