第五章:上回る者

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「失礼します」 どこかから見ていたかのように電話を切ると同時に朝日が部屋に入ってきた。朝日の表情は事務的な作り笑顔だったが、そんなことを気にも留めず守谷は笑いを漏らす。 「坂崎 奈緒は連中と同じ部屋に案内しましたが……守谷さん?」 「今ちょうど僕の勝ちが確定したところさ。事務所を今から襲撃させる。夢見町に待機している部隊に連絡も入れた。今度はこの前とは違う。最初から殺す気でかかるんだ」 「…?もう攻撃を?“金魚のナミダ”はどうなさるんです?」 「やはり事務所にある。間違いない。見つかれば神野は殺せばいい。見つからなければどんな手を使ってでも吐かせるさ」 朝日はこれほど感情的な守谷を久しぶりに見た。端から見れば感情的には見えないかもしれない。だが長年一緒にいた朝日には守谷の心情が手に取るようにわかっていた。
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