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『……守谷さん?ど、どうしましょう?警察がここを嗅ぎつけるのも時間の問題かと……』
発砲した後で興奮しているのだろう、男は冷静な判断力を欠いているようだった。息を荒げてこちらに指示を仰ぐ声に守谷は正気に戻った。
「金庫と神野を本部に持ってきてくれ。そこで無理に開けなくていい。まずは安全を確保し、尾行に気をつけて本部に戻るんだ」
電話を切ってからも守谷の興奮は収まらない。勝ち誇った顔で声を上げて笑っている。その様子から“勝った”んだと朝日も察した。
思えば9年前、自分……いや、仲村がしくじったせいで“金魚のナミダ”は二度と手に入ることはないと思っていた。
当時、対して有名ではなかった探偵……神野 光に正体がバレなかっただけマシだったが、あの時朝日は痛感していた。神野には勝てないと。
あの一見バカっぽい行動の裏で何を考えているのかわからない、相手の頭の中を見透かしたような言動。朝日は神野に恐怖さえしていた。
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