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この日は久しぶりに大寒波が押し寄せ、ここ夢見町には珍しく雪が降っていた。
道行く人々の表情はたまにしか見れない雪を見て喜んでいる者、道路が凍ったりすることで憂鬱な顔をしている者と多種多様だった。
しかし私の地元では雪は珍しくない。
そう、昨日も雪が降っていた。
昨日……も。
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「何故ですか!?あの人が自殺なんてする訳ないっ!」
「そうは言っても状況を見れば一目瞭然でしょ?他殺だって言うなら根拠がないとねえ……」
「だから……あの人が自殺なんか……」
「はい、もうおしまい。これ以上話しててもなんも進まないですしね。……寒いですし。そろそろ我々、撤収しますんで。
あ、何か問題があったらここに連絡を--」
「もう……いいです!」
「あ!ちょっと……」
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私はそのまま“その事件”の真相を求めに地元から遠く離れたこの『夢見町』にやってきた。
以前テレビで『“神”と呼ばれた凶悪犯を逮捕に追いやった探偵がいる』と…
その噂だけを頼りにこの町にやってきた。
きっと、その坂崎 一郎という探偵なら…
…淡い期待ではあったが私にはもうそれしかなかった。せめて真実を知りたい。
自殺ならそうなってしまった理由を知りたい。他殺なら……いや、よそう。
私はくだらない考えを振り払い、地図を見る。
…しかし地図に探偵事務所など載っているはずもなかった。
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