第二章:到着

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「うー寒かった!」 第一声。寒くて死ぬんじゃないかと密かに思っていたジュンは座席に腰を下ろしながら手袋を外した。 「さ、寒かったです……ワワワ…ワタヌキさん……」 「だからもっと着込んだ方がいいって言ったのに。まあ、岩手はもっと寒いだろうし頑張ってねナオちゃん」 「わ、私を見殺しにする気なんですねっ!?いいですよ別に!貼るカイロいっぱい持ってきましたから!」 ニヤリと笑ってセーターの裾を捲ろうとした奈緒の手をジュンは凄まじい瞬発力で押さえた。 「こんなとこで貼ろうとしちゃダメだって!もっと羞恥心を持ってくれないと俺が恥ずかしい!」 「むー……」 奈緒は不満そうな顔をしてやっとカイロを諦めた。 こんな公衆の面前(他に誰もいないけど)で脱ごうとするとはなんて心の強さだ。 ジュンは深いため息をついた。
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