第三章:可能性

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水樹の父を部屋に残し、広い屋敷の廊下を歩いて現場に向かう途中、水樹は明るい声で“彼”の事を教えてくれた。 声は明るいのだが本当は語りたくもないはずだ。 「結城 涼太(ユウキ リョウタ)。それが私の婚約者の名前です」 「へぇー……あれ?ワタヌキさん、結城 涼太ってどこかで聞いたことありませんか?」 「そういえばどこかで聞いたことある気がするなぁ。なんでだろう?」 ジュンと奈緒が悩んでいると水樹が横から得意気に言った。 「ふふ。ヴィジュアル系バンドグループ『独裁バッドエンド』って言えばわかりますか?」 「独裁バッドエンド?……あっ!」 思い出した。最近、有名になってきたヴィジュアル系バンドのグループ『独裁バッドエンド』のボーカル『RYO』こと、結城 涼太。個性的すぎるグループ名を考え出したのもボーカルの彼だとテレビで見た気がする。 しかしなぜ? 「なんかこう言ったらあれですけど、なんであんなノリノリな人とこんな和風な水樹さんがお付き合いを……?」
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