第三章:可能性

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「あの樹にロープがぶらさがっていました」 (つまりあそこが現場ってわけか……) 「お好きな長靴をどうぞ」 水樹はそう言うと、縁側に用意されていた長靴の一つを履き樹の根元に向かっていった。ジュンと奈緒も適当に靴を選び後に続く。 根元まで来て気付いたが樹の枝にまだロープがぶらさがっていた。警察が現場保存でもしているのだろうか。とりあえずジュンはロープには触らず辺りを見た。 樹の後ろには塀。横には池がある。そして屋敷の廊下からここまでは5メートルほどある。 「この樹で彼は首を吊っていたわけです。そして屋敷からここまでの足跡が残っていましたが足のサイズなどから恐らく本人のモノらしいです」 「確かその足跡っていうのは“行き”の分だけなんですよね」 「はい。ですから警察は他殺ではないと。まあ……他殺だという証拠どころか可能性すらないんですけど……」 確かに今の話を聞いた限り、他殺とは思えない。足跡は行きだけだし、樹を登って塀から出たという可能性もあるがさすがに警察がそれを見落とすはずがない。 それでも警察は自殺だというのだから恐らくそんな形跡はなかったのだろう。
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