第六章:一服

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「あ……どうも」 とりあえず無視するわけにもいかないので申し訳程度に頭を下げてジュンは服を脱ぎ始めた。 「……ワタヌキさん、その後の進展はいかがなものでしょう?」 「え?あ、ああ……いろいろな人に話を聞いたんですがどうも他殺の可能性は低いかなー……なんて」 「……そう、ですか」 雪満は残念そうにタバコの煙を吐いた。 「それにしてもこの辺りは寒いでしょう。あなた方の住む街では雪もめったに降らないのでは?」 「確かにあんまり降らないですね。まして積もってるのを見るなんてほとんどないですよ」 「慣れない気候で体調でも崩したら大変です。今夜はどうかゆっくりしてください。私自身、ついこの間風邪をひきましてな。30年ぶりに寝込む羽目になりましたわ」 「……地元の人でも寒いってとんでもないですね」 「ハハ……まあ、そんなことにはならんようにお気をつけください」 雪満は笑いながらタバコを灰皿に押しつけると脱衣所から出ていった。
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