第七章:閃き

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「すっ、すいません!全然気付かなくて!大丈夫ですか!?」 「だ、大丈夫です。のぼせてたからちょうどいいくら……は、はーくしょんっ!」 「ああああ!人様に風邪をひかせてしまうなんてええ!」 「いやいや大丈夫です!鼻がかゆかっただけですから!」 この屋敷に住む人間は全員クセが強く、ジュンではさばききれない。今も自殺しかねない勢いで頭を下げまくる水樹をなんとか止めれたというところだ。 「……にしてもなにしてるんですかこんな夜に」 「……涼太と…………」 (涼太?) その時、今いる場所から見えるのは結城 涼太が死んでいた現場だということに気付いた。 「私……未練がましいですよね。婚約を解消しようとまで言われた人を死んでもまだあきらめられないなんて……本当に……」 水樹の涙が廊下の床板に音を立ててこぼれた。
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