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「おい、なに俺らを蹴ってんだよおい」
「……は?」
目を開くとなんと王冠をかぶった等身大のゴキブリが胸ぐらをつかんでいた。
「う、うわっ!なんだお前!」
「俺様はゴキブリ界のカリスマ、ゴキブリキング様よ!」
「そのまんまじゃねえか!」
「うるさい!お前はどうやらまだ身の程を理解してないらしいな。オイお前たち!」
ゴキブリキングが指(?)をパチッと鳴らすと暗かった空間に明かりがついた。周りを見渡してみると、ここはどうやら裁判所のような所らしく傍聴席には普通のゴキブリが溢れかえっていた。
「な、なんだよここは!」
「見てわからないか?ゴキブリ界の司法のトップである、最高裁判所だ。お前は今からその罪を償うのさ」
「罪?なんだよ一体」
ガンガンガン!
裁判長らしき立派な触覚を持ったゴキブリが木鎚を叩いた。
「静粛にしろ!被告人、ワタヌキ ジュンは我々ゴキブリを足蹴した罪に問われている。これはとんでもなく重い罪である!よって死刑!弁護側、異議は?」
「異議なし」
「いや、異議唱えろよ!?弁護人……ゴキなんだろ!?」
「それでは検察側の求刑通り、被告人を『台所用洗剤をかけた後、弱りきったところを丸めた新聞紙で思い切り殴る』刑に処す!なお、被告人はこの判決が気に入らなくても控訴することはできません」
「……まあ、最高裁だからな……って待ってくれ!死刑……か何か知らないけどやめてくれ!俺はやってない!」
「それでは閉廷!」
「はっ!」
ジュンは汗だくになりながら飛び起きた。なんだかとても不愉快な夢を見た気がする。
「夢か……なんだよゴキブリを足蹴って。俺が蹴ったのはおもちゃの……」
ふとベッドの下を見ると寝る前には確かにあったゴキブリのおもちゃが一つ残らず消えていた。
「はぁ!?う、嘘だ!」
ベッドの下にもテーブルの下にもかばんの中にもどこにもない。
「あれって……本物だったのか?」
そう思うと急に寒気が走り、背中がかゆくなった。ジュンは悪夢を振り払うように首を左右に振ると、再び目を強く閉じて眠りについた。
「ウフフ……」
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