回顧

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 ああ、雪が降っている。  僕は涙に潤んだ目を瞬かせながら、大きな窓の外を見ていた。 このアパートに引っ越してきて一年と三ヶ月。1ルームのこの部屋は、彼女の好きなもので埋め尽くされていた。 カーテンが半分ずつ開けられて、ベランダの向こうは白くてふわふわしたものが、際限なく降り注いでいる。 夕方から降り始めた雪は、天気予報では一晩中降り続き、明日の朝には交通機関や人々の足を完全に麻痺させているだろう。  もう一月も終わろうとしていたけど、これほどまとまった雪は久しぶりだった。北陸の地であったが、今年は十二月も雪が降らず、一月に入っても、申し訳程度の雪が降っただけだった。  車のタイヤは早めにスタッドレスタイヤに替えていたけれど、道路の乾いた日が続き、油断しているところに、北陸特有の湿った思い雪だ。除雪も間に合わなく、車通勤の率が多いこの地方では、間違いなく通勤時間が倍になるだろう。 明日以降も降り続ければ慣れてしまうので、流れもスムーズになるのだが、降り始めが一番、交通に影響を与える。 ましてや明日は平日だ。
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