回顧

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 そんな世の中の人々の暮らしを気にしているわけではない。  たった今、携帯電話の電源を切った。  三日前までは仕事帰りにこの部屋で、我が物顔でくつろいでいた彼女。突然でもなく、ある程度の前兆はあったが、やはり直接お別れをしかも電話で伝えられると気分が滅入ってしまう。  どうして僕は富山県にいる?  そう自問自答。  住まいを転々とし、失恋をする度にそう言っていたっけ。何で東京にいる?とか何で札幌にいる?とか・・・  こうして富山という、大阪生まれの僕には県名自体、二十歳過ぎるまで出会わなかった場所にいることも、結局恋愛絡みだった。  まあ、今回も自分が悪い。  仕事の事では吐かない大きな溜め息を、一度腹をへこませて、搾り出すように吐いた。  自分が本当に傷ついているのか、傷ついた振りをしているのか、恋愛に関しては、何度も同じ事を繰り返してきたからわからなくなってしまった。 もう、三十二歳だというのに、独身のまま若者と同じような一人暮らしをしているし。
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