空母赤城

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隊長がニヤリと笑うのを見て、俺はほっと胸を撫で下ろした 「なら弾井少佐殿に変わって俺が厳しく処罰してやろう。今から俺の射撃訓練の的にしてやるから大人しくそこに立ってろ!俺の銃の腕がたしかならすぐおわるからな、心配することはない。それと、俺はもうシワだらけだから、余計な心配はせんでいい。」 血の気が引いた顔で俺が首を横にぶんぶんふると、今度は左の頬に鉄拳制裁をぶちかまされ、俺はもがきながらゆっくり立ち上がった。 「この馬鹿もんが!」 俺は本日二度目のどなりつけをくらった。そして隊長はさらに話しを続けた。 「これだけの艦隊でミッドウェーを攻めるんだ。ここで負けるような事があれば大日本帝国に光は無くなるも同然だ!」 俺は隊長に殴られた左頬が痛くて手で抑えながら話をきいていた。 「このミッドウェーも、帝国科学研究所と山本長官殿はなにか策を考えとるんですかね?」 俺が訪ねると 「帝国科学研究所が策を考えているかはわからんが、どんな事をしても、俺達がこの戦いに勝利しなければならない事は確かだ。」 おそらく、米艦隊も必死で我が帝国海軍に挑んでくるであろう。しかし、この戦いに負ければ帝国は確実に劣勢に立たされ、敗戦への道を歩んで行く事になる。そんな事を考えながら一面に広がる海を見ていると、隊長が俺に問いかけてきた。 「なあ栗林、お前は戦争をする上でなにが一番大事だと思う?」 俺はすぐに言い返した。 「最前線を維持する事であると思いますが」 すると隊長が渋い顔になるのを確認して、俺はいつ殴られても大丈夫なように身構えた。すると 「栗林、よく覚えとけ、戦争をする上で、いや、俺達が生きて行く上で一番最優先すべきなのは、補給線の絶対確保だ。」 俺がぽかんとしていると、隊長はさらに続けた。 「強力な兵器と、その兵器に熟練した強力な人材がいれば、勝てない物などない。それは間違いだ。いくら強力な兵器と人間がいても、装備や燃料が切れればただの鉄屑だよ」 なるほど!と言わんばがりに俺は頷いた。そして、俺は隊長が言った次の言葉を生涯忘れずに生きて行くことになるのだ。 「いいか栗林!戦争の素人は最前線を語りたがる。だが、戦争の玄人は補給線を語るもんだ。俺の下にいる間は、胸に納めていてくれよ」 俺は隊長の言葉に感動すら覚えたのであった。
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