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あんなに怒った母さんは初めて見たなぁ。涙目になってたし、体が震えてた。いつもは謝れば許してくれるけど、あの時は無視された。学校では謝れば許してもらえるんだけどな。オトナの世界では違うみたいだ。
教室に先生が入って来た。みんな慌てて席に着く。今回も点数が悪かったら、母さんとはしばらく話しが出来ないかもしれないなぁ。テストの点数が良ければ、趣味のラジコンカーの部品を買ってくれるし、夕飯のおかずが豪華になる。悪い時は、僕の嫌いなピーマンやトマト、人参が入ったおかずを出す母さん。ニコニコ顔で、
「今日は美味しく作れたのよ。残さず食べてね」
って言うんだ。残すとスゴク悲しそうな顔をして睨むから怖い。
テスト用紙が配られた。ざっと見た感じ、出来そうな問題が多くて安心した。
テストが終わって、教室では出来たかどうか騒がしい。教室を出て、家に帰る。
JOYの前は店から出て来たお客さんで賑わっていた。お客さんと一緒に敬太さんがいた。お客さんと楽しそうに話しをしてる。ホントは話しかけたかったけどジャマになりそうだから、気づかれないようにさっさと歩いた。
家に着いてドアを開けた。
「お帰りなさ~い、圭チャン」
お風呂から母さんの声が聞こえた。
「ただいま」と答えた。お風呂から母さんの歌声が聞こえてきた。今日は何か楽しい事があったみたいだ。
食卓に僕の分の夕飯が置いてある。いただきまぁ~すっ、と母さんに聞こえるように言って、ご飯を食べる。今日のおかずは鶏の唐揚げ、サラダ、みそ汁。いつもよりおいしく感じるのは、母さんの機嫌がいいからだろうか。
「圭ちゃん、今日のテストはどうだった?」
タオルで髪を乾かしながら、母さんが来た。
「うん、まぁまぁ…」
「圭ちゃんのまぁまぁは期待出来ないわね」
「今回はちょっと自信があるさ。テスト前にテキスト見たし。」
「ちょっとだけ期待しても良さそうね」
母さん、今日はいつもと違う。
「母さん、今日は機嫌がいいね。敬太さんと何かあったの?」
母さんの笑顔がなくなった。
「アンタには関係ないでしょっっ」
さっさと自分の部屋に行ってしまった。いつもなら、缶ビールを飲みながら今日の出来事を聞いてくれるのに…。
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