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驚いて立ち止まりそうになったが、もともと全く接点が無かったかのように振る舞いその場を離れることにした。接点とは言っても単にコンビニで目があっただけなのだが。
女性の歌はけばけばしい格好からは想像つかないようなメロディーだった。ギターケースには小銭が殆ど無くて哀れだった。でもこれ以上の接点を持ちたくなかったのでその場を去った。後ろめたい気持ちになったが、半端な同情をしても仕方がない。
相も変わらず予備校と自宅での勉強は退屈だった。そもそも浪人生活を楽しむようではいけないものだとは思うのだが、それでも何らかの楽しみは欲しいものだ。そんな要素が数少ない。
アルバイトは楽しい。関さんとの仕事は楽しい。社会人としての振る舞いを手取り足取り教えてくれなくても行動で示してくれる。関さん以外の人も優しいし面白い。非現実的空間として過ごせる。悲壮感を一時的にでも無くしてくれる。
けばけばしい女性はあの日以来少なくとも僕が入っている日は毎日やってくる。最初は10時過ぎだったが2回目から9時頃に来店するようになった。ビタミン100%のジュースを買っていく。そして代々木駅前で歌を歌っていた。謎だらけな女性だ。
1ヶ月などあっという間に過ぎてしまった。桜は儚く散った。花見は行けず終いだった。浪人生なのだから、極力遊びは避けるべきだとは思うのだが、それでも悲しい。来年こそは堪能してやると誓った。
4月の下旬に模試を受けた。ある種の基準になるテストだ。1年間でどれだけ延ばせるか、現時点での自分の位置を推し量る上で大切なテストだからだ。
東京大学前期 C
東京大学後期 E
一橋大学前期 B
早稲田大学法学部 B
早稲田大学政治経済学部 B
慶應大学経済学部 B
模試とは言え判定が予想より良くないと悲しくなる。たかが模試だなどと割り切れる器用さを持ち合わせていない。もっと勉強に励まなければと思った。
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