四月

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そもそも浪人生のくせにオシャレに気を使ってみたり、やたらと交友関係を気にするのは如何なものかと思う。そう言う姿勢が現役での失敗に繋がったのではと問いかけたい。少数派ではないだろう。 僕は全授業を最前列ど真ん中で聴く。やる気を示すとともに両親は安くないお金を払ってくれたのだから無駄にしたくない気持ちも含まれている。 アツい性格ではないのだがアツい授業を繰り広げる先生は大好きだ。こういう先生に出会えただけでも予備校に行く意味はあるのかもしれないと思い始めた。以前よりも予備校通いが楽しくなるし何より勉強の励みになる。 「接点t!」 とは言っても最前列だからあまり叫ばれると耳が痛くなる。 授業が終わって自習室で勉強をしていた。あまり家で勉強したくない。誘惑があるし落ち着いてしまう。適度な緊張感と勉強に対して強制的な空気が欲しかった。 「…………ねぇ、いいかな?」 黙々と勉強に励む中聞こえた女の子の声。思わず振り返ってしまった。隣の席から区切られた板の横から僕を見ていた。それぞれに区切られた席が設けられた自習室。予備校で言葉を発することがほとんどなく、交流も無きに等しい僕が話しかけるなんて。しかも結構かわいい。セミロングは僕の好みだったりする。 「はぁ…………。」 警戒と女の子と話せる嬉しさやその他の感情が混ざった声。 基本的に私語厳禁な空間だから小声で会話をする。 「東大文系クラスだよね?いつも最前列に座っている…………一昨年の東大入試の英語の長文を解いたんだけどいまいち赤本の説明が分からないから教えてくれない?特に(3)。」 僕にルーズリーフを渡してきた。 「いや、この場合はむしろ先生に聞くべきだろう。浪人生の僕に聞いたところで完璧な答えは望めないよ。」 ルーズリーフを返して勉強を再開した。 「うっわ~、最悪のリアクション。女心を少しも理解してないよ。」 女の子は明らかに僕に聞こえるように言って自習室を出た。 何か間違えたのかな?僕としては凄く親切な受け答えをしたのに。集中力が途絶えてしまった。女の子が自習室から出てまもなく僕も出た。 今度あの女の子に会ったら真意を聞こう。
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