四月

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・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 2日ぶりのバイト。関さんと2人きり。あれから履歴書を盗み見していたことは誰にも言っていない。関さんもその事について聞いてこない。出来るならもうその件については話したくない。 今日は客がまばらだった。単価も低い。関さんも陳列棚の整頓や床掃除を終えてレジにやってきた。今日はヘルプをしてもらってないから、それだけ暇なのだ。 「どうだい、この仕事にも慣れたかい?」 関さんは手を洗いながら聞いてきた。 「まだ二回目なんですけどレジ打ちならある程度やれていると思います。忙しさも毎回こんなものだったら良いんですけどね。」 僕の何気ない一言が気に入らなかったらしい。関さんは舌打ちをした。 「全く、この程度の売り上げが続くならこの店はやっていけないよ?接客業をやっといて暇を望って…………呆れるね。」 確かに関さんの言うとおりかもしれない。なんか凄い消極的な姿勢だったように思える。 「すいません、僕アルバイトだったんで気楽な態度でやってました。」 「私も同じだよ。」 「え?同じ?」 「私もアルバイトだ。時給は君よりも貰っていても身分は非正社員だ。五年前にリストラされて以来ここで働いている。」 初めて見た。架空の世界かと思った。中年男のフリーターを。 「え?本当なんですか?」 「おかしいかね?中年男がコンビニのアルバイトで生計をたてているなんて。お気楽な態度でのぞんでいる君の横で一生懸命働いているアルバイトの私が。」 関さんは徐々に口調が早くなり顔が紅潮してきた。こういう時に限ってお客さんは来ない。立ち読みする人もいないなんて。 「一応求職中だよ。正社員で働けたらどんな仕事でもいい。だけど年齢的に採用してくれないんだよ。妻にも逃げられた。今は自宅マンションを売り払い風呂なしトイレ共同のボロアパートで細々とくらしているよ。慰謝料を少しずつ支払いながらね。」 関さんが話終えると堰を切ったかのようにお客さんがやってきた。 「これから忙しくなりそうだから、気を抜かないでね。」 関さんはポンと僕の背中を叩いて言った。
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