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女性の場をわきまえないメイクと香水に呆気にとられてしまいマンガそっちのけで暫く様子を見てしまった。果汁100%のジュースを買っていた。一応お肌を気にしているのかななんて邪推してしまう。
女性は買い物を終えてコンビニから出ようとしたら出入り口付近で僕と目があった。それは多分1秒にも満たないであろうが女性に様々な想いを与えてしまったことは確実であり何とも気まずくなった。僕は急いで目を逸らして雑誌に目をやった。
女性は無言でコンビニを出た。よく考えれば目があうのなんかしょっちゅうで、それが偶々けばけばしい女性だっただけだ。あちら側だって目があったのが見知らぬ冴えない男だっただけだろう。そこで喧嘩沙汰になるだなんて中学生の不良や、勘違いした暴力人間くらいだろう。若しくは人間界以外の世界でしかないと思う。
女性は袋をぶら下げながら代々木の街に消えていった。コンビニの中に強烈な香水の香りだけを残して。
何故か僕は女性が視界に入らなくなったことを確認してコンビニを出た。その行為は後から考えれば馬鹿らしいものではあった。
人はたまに不思議な事をしてしまう生き物だ。ある範疇に収まれば笑われたり、時には魅力的なものとして受け入れられるが行きすぎるとそれは犯罪者や奇人などとレッテルを貼られる。どちらも秩序の中に生まれるカオスなのかもしれない。理路整然とした空間に息苦しさを覚えるのはカオスがないからかもしれない。カオスは必要だ。いわば必要悪。犯罪のない世の中など退屈に決まっている。自分やそのコミュニティーで犯罪が起こらなければ誰しも犯罪を受け入れているのだ。認めようと認めまいと。
代々木駅に向かうと駅前からギターを鳴らす音と歌声が聞こえてきた。10時を回って徐々に人通りも少なくなってきたのだから聴く人なんか少ないと思った。それに代々木駅で歌うよりもっと大きな駅で歌えば良いのに。時間を改めて。
歌声は女の人のものだった。女性のストリートミュージシャンは初めてだ。こんな時間にこんな場所で女性が歌うという面白さに興味が沸いてきた。とりあえず顔だけでも見てみようと思い近寄ってみた。
立ち止まって聴く人は無し。僕もさり気なく顔を見て素通りしようとした。近寄るにつれて嗅いだことのある強烈な香水の香りが鼻につく。歌っている女性の横にはコンビニの袋が置いてあった。
その人はけばけばしい女性だった。
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