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凜子は無表情のまま、確かにこう言った。
「あそこまで始終嘘ばかり吐いていたのだぞ。あるわけないだろ」
「嘘だと?」
「気がついてなかったのか? 私たちは何時彼に自己紹介をした? いくら学年が離れていたとしても、同じ学校に通ってる人間が一度も会わないなんて、ありえるのか?」
凜子の言葉に、瞬は言葉が詰まった。
瞬にとって、先ほどのあやめと交わした会話はたわいないものだった。だからその内容について、覚える気もないし疑う気もなかった。
しかし凜子は違った。
そのことが、瞬にとっては驚愕せざる得ないことだったからだ。
だからだ。
言葉を詰まらせてしまったのだ。
その時、ふと外から水がはじける音がした。
それは次第に大きくなり、瞬く間に合唱をはじめる。
夕立だ。
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