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     バスの乗客は、凛子だけだった。三つ程前のバス停までは、まばらながらも人の乗り降りがあったのだが、今はそれもない。  凛子が向かう先が、どんなに寂れた村なのか、このがらがらのバスが如実に物語っている。  あの村は、死んだのだ。  ふと唐突に、そんな言葉が凛子の頭に浮かび上がった。思いついてみれば、確かにそうだと一人うなずく。  村に唯一あった小中合同の分校は、凛子たちを最後の卒業生に、廃校になった。子どもが育つ場所を失った村からは、若者が姿を消したことだろう。残るは、あの地に愛着を抱く老人ばかり。それも、時が過ぎれば消えていく。  あの村は、死んだのだ。あるいは、死んでゆくのだ。  そして凛子は、出てきたはずの死にゆく村に、再び呼ばれて戻っていく。    
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