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     見れば、出入口の近くに凜子が立っている。   「あ、そっちに居たのか」    凜子が二人に近付く。   「燭台、あるじゃないですか」 「いや、探してたのは俺の分であって…」 「そんな事はどうでも良い」    凜子に話の腰を折られた。   「お前に聞きたい事がある」    凜子があやめに詰め寄る。   「何ですか?」 「私達より先に、誰か来たか?」 「…いいえ、誰も来てませんよ」 「そうか」    凜子はそう言って頷くと、瞬の腕を引っ張った。   「おい、何だよ?」 「良いから来い!」    瞬は凜子に無理矢理、廊下に押し出された。   「校舎の中を一回りして来るから、その間に準備の方よろしく」 「わかりました」    そうあやめに告げると、凜子は給食室の扉を閉めた。   「……」    閉ざされた扉を、あやめはただ見詰めた。  そしてパスケースを取り出し、それを握りしめてポツリと呟いた。   一一…    
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