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ある魔女との出会い†
俺はとにかく綺麗な寂しげな歌声のする方角に向かった。こんな人気のない森で誰が…でも不思議と恐怖はなかった。ただ好奇心だけが俺をつき動かした。
そして草木をガザガサとかきわけるとガリバルディ大聖堂が見えてきた。大聖堂の側には一人の少女が背を向けて誰か男性を膝枕して座り込んでいた。少女の顔はこちらからは見えないが貴族が着るような上品な白いドレス姿…クリーム色の両側にお下げした髪型だけがみえる。膝枕されている男性は寝ているのか…気絶しているのか…目を瞑ったままぴくりとも動かない。
男性の顔は肌は驚く程に美しく、整った顔立ち、そして男性なのは見てわかるが、一見女性にも見間違えるような色気…人間なのか?と言いたくなるような不思議な美しさを放っていた。少女はまだあの寂しい歌を歌っていた。
「まぶたに焼き付いた…セピア色の思い出も…今はそっと…光の向こう側へ…」
なんて寂しい歌だ。聴いてるこちらまで寂しくなる。俺は唾を飲み込み、少女に声をかけた。
「あ、あの…」
少女は首だけをこちらに振り向けた。少女も膝枕している男性と同じように肌は真っ白。クリーム色の長く、両側にリボンで結んだお可愛いく下げした髪型。俺らと同じくらいの歳だろうか。
何より目につくのはそのは大きくぱっちりしている“真紅の瞳”…俺はその宝石のように美しい瞳に見つめられドキッとした。
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