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少女は男性を膝枕し、俺に顔だけ向けたまま口を開いた。
「…何か?」
透き通るように細い声で人形のように冷たい表情…でも美人だ。こんな美人を見たのは初めてだ…美人で、俺らと歳が同じくらいの女の子とは思えないくらいの落ち着きを感じさせる。
…俺と少女が会話を始めても少女が膝枕している男性はぴくりとも動かない。その男性は大丈夫だろうか?俺は聞いた。
「その人大丈夫か?何か病気か?」
少女は膝枕している男性の顔を見つめ言った。
「…もう手遅れよ…この人はもう死んでるから」
俺は言葉を失った。まだ若いのに、何が原因で死んだかわからないが、多分この少女にとっては大切な人だったのだろう。少女は人形のように無表情だが、男性を見つめる姿は少し寂しそうだ。しばらく俺達は沈黙していたが少女は男性の顔を見つめたまま口を開いた。
「この人の名は“マティアス・クロンクビスト”。人間でありながら人間に在らざる存在…」
俺の頭の中はクエスチョンでいっぱいだ。この少女は何を言ってるんだ?少女は続けた。
「人でありながら人を超える力を手に入れた彼は。力を得た代償に耐えることが出来なかった…何て哀れな人なんでしょうね…」
コメントしようがない。俺には彼女の話が難し過ぎる。ともかくこの男性が死んでるのだったら何とかしなくちゃ。
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