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彼女の話は難しい…でも俺は何とか会話を繋ごうと彼女に聞いた。
「何故その人はそんな力を欲しがったの?」
少女はマティアスを見つめたまま答えた。
「…きっと恐かったのよ」
僕は言葉が見えなかった。
「え?」
少女は膝枕しているマティアスの後頭部をそっと地面の生い茂っている草に置き、そっと立ち上がった。
「人間が恐かったのよ…恋人も…親友も…」
立ち上がってみると少女の背丈は小柄なルーシーと背の高いクレアの中間ぐらいか…俺より少し低いぐらい。既に日没になってるが月明かりに照されてこんな樹海でも明るい。今夜は変わった月が出てるな。紫色の三日月…不気味だが、美しいな。まるで目の前にいるこの少女のようだ。彼女の話はわからないからか俺は話を反らすように名前を尋ねてみた。
「申し遅れて悪かった。俺はシーザー」
少女は真っ白なドレスの両端の裾を両手でつまみ、貴婦人が位の高い公爵にするような表情は無表情だが、礼儀正しく一礼をし名乗った。
「私は“ルナ”…“ルナ・ゼノサキス”…以後お見知りおきを」
おそらくこの子“ルナ”は位の高い貴族の家柄だろう。俺みたいな世間知らずでもわかる。そして俺は月明かりに照され、宝石のように美しい真紅の瞳で見つめるルナの妖しくも麗しい美しさにしばらく釘つげになった。その人間離れした魔性の魅力に…。
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