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彼は放浪者だった。
広大なる暗闇の空間の中にただ一人彷徨う放浪者だ。
上も下も無い。右も左も前後すら……。
まさに彼は漂っていた。
何らかの質量物質に衝突しない限り彼は漂い続ける。
ブラックホールやら暗黒物質など、彼にとっては何の意味も持たなかった。勿論、彼の進行を拒もうとする小惑星や太陽風、爆発寸前の星の収縮さえも。
彼の目的はただ一つ。
宇宙に存在する生命体に人類がいたことを示すだけだった。
何故?
そんなことをして意味があるのか?
それを彼に投げ掛けても彼は何も答えないだろう。彼を作ったマザーコンピューターに聞いたとしても、満足出来る解答は得られないはずだ。いや、逆に問われるかもしれない。
『人類は何故滅びると解っていて子孫を残そうとしていたのか?』と。
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