松本さんのクィーンズシート…それから

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「12週めに入ってますね…」 「…」 「ただ…少し様子がおかしいので しばらく経過を見ないといけませんが」 「様子?」 「先週、強い衝撃をお腹に受けたとアンケートにありましたね。 そのあと強い腹痛と出血があったと…」 「…はぁ…」 「今は出血は止まっているようですが 赤ちゃんが正常に育っているのかどうか まだわからない状態です。 結婚はされてないようですが 一週間後、できればその子のお父さんともう一度受診してください」 まるで他人ごとのように聞こえた。 医師が何を言っているのか 理解できていない。 耳に膜がはって 遠くで医師の声がして 自分のことではないように思える。 「お大事に…」 会計を済ませ 孝之さんの車を探した。 時間がかかると思ったので 孝之さんは少し離れたコンビニにいると言っていた。 孝之さんの車はすぐわかった。 コンコン!とドアを叩く。 「あ、お帰り」 「ごめんね、待たせて」 「いいよ いい時間つぶし見つけたから」 そう言った孝之さんの手にはペンとクロスワードの雑誌があった。 「どうだった?」 優しい孝之さんの声に 答えたいのにうまく言葉が見つからない。 「ちょっと待ってて」 孝之さんはコンビニの中に入って行った。 すぐにお茶を買って出てきた。 「はい 飲んだら落ち着くから それから話して。 俺でよければ話し聞くから」 「ありがとう…」 「とりあえずここから移動するか…」 車は河原沿いの道に向かって走り出した。 私はコクコクとお茶を飲んだら少し落ち着いた。 カーコンポから 慰安旅行で孝之さんが歌っていた曲が流れてきた。 🎶言葉にできるなら 少しはましさ 互いの胸の中は 手にとれるほどなのに … 出会いがもっと早ければと… I love you…僕だけの君ならばこの道を駆けだして 会いに行くのさ 今すぐに … 届かないものならば いっそ忘れたいのに… 忘れられないすべてが🎶 こんな歌詞だったんだ。 「俺さ…」 孝之さんが話しだした。
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