39歳の新米教師

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4月。 小学校・中学校・高校・大学・会社。 日本に所属しているなら、今の季節は春。 児童・生徒・社員が新入という形で入ってくる季節である。 若者だけとは限らない。 犬飼は静まった校舎の前に立っていた。 桜の花びらが少し強い風に舞っている。 その花びらが犬飼の白髪混じりの髪に落ちた。 地味な茶色のスーツ。 革靴を履き、赤い手提げ袋を持っていた。 PM6:00 犬飼はくたびれた様子で校舎に入っていった。 夜と言ってもこの時期・この時間帯は、夕日が出ていて明るかった。 この校舎は築60年。 かなり年季の入った建物である。 ~純白~ それがこの学校の校風。 裏表なく、シミ一つない青少年なり世に羽ばたけ。 シンボルである銅像の鳩は闇夜を浴びてカラスになっていた。 この校舎の2階、2ー2教室は夜になると定時制1年のクラスになる。 「ガラッ」 教室に犬飼が入ってきた。 人数は10数人。 知り合い同士はいないらしく、群れている様子もない。 全員が席に着いた。 犬飼は教室を見渡した。 そして背筋を伸ばし歩き始めた。 「今日から皆さんの担任を務めることになりました、犬飼結です。」 39歳の新人教師が今、教壇に立った。
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