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ひっそりとした山奥に建つ館の一室。
ちらりちらり。
木漏れ日が差し込む春。
早朝から鳥の地鳴きが賑やかで穏やかな日だった。
太い木の格子に囲まれた座敷牢。
古びた人形が見つめる小さな部屋で少女は手を組み、ひとり祈りを捧げる。
『姫様。御館様がお呼びでございます』
久方ぶりに聞いたその声に祈りを止めると、幾分大人びた幼馴染が牢の鍵を開けていた。
少女は思わず名前を呼んだ。
だが彼は僅かに肩を震わせただけで視線を合わせようとはしない。
それが今の距離。
『・・・わかりました。案内してくださりませ』
そう・・・わかっている。
この祈りは罪。
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