プロローグ

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最初の給料が出るまでという約束で、那智はあたしの部屋に居候し、歌舞伎でも5本の指に入るだろう大箱のRのホストとして働き始めた。 ここでも那智が売れるのにはそんなに時間はかからなかった。 新人ナンバー1をとり、入店から3ヶ月後にはナンバー常連に定着していた。 Rには不動のナンバー1、ナンバー2がいるので、なかなか頂点は極められなかったけど、入店6ヵ月後に設定したバースデーの月は、ちゃっかりナンバー1をとっていた。 何かイベントがある度に、他店から同業サンが那智のところへ来てくれるようになった。 だから那智も2ヶ月に1回くらいは同業回りをするようになった。 今回は、那智の地元の先輩のいるclub Aに行くことになっていた。 関西から進出してきたAは那智のお店と競るくらいの有名店で、ホストの数も多く、1部2部に分かれていて、TVにもよく取り上げられているほどの大箱。 あたしはいつも、 まぁ、那智のおごりで飲めるし。(笑)と割り切って着いていく。 いつもと何も変わらないと思っていた。 ただどこにでもあるような、仲のいい兄妹の絆から。 まさか、思いもよらない、儚くも切ないドラマに発展するとは思ってもいなかったんだ。
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