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そこは、辺境の村だった。その村には、幸せな時間が流れていた。あの日までは───────
「父さんっ、母さんっ!」
「こっちに来てはだめよっ! 逃げなさい!」
母親の声に、少女はその場から立ち去ろうとした。だが、少女は足を止めた。その少女の眼に映ったもの、それは父親と母親の無残な姿だった。
「逃げ…て…」
「母さんっ!…っ」
少女は大粒の涙を流しながら、必死に走った。ただ、走り続けた。一つの誓いを胸に刻み込んで─────
それから数十年後、その少女は森の中を歩いていた。彼女は森の中に逃げ込み、それからはずっと、森の中で暮らしていた。
十数年の間、たった一人で生きてきた。幾度ともなく、寒く、厳しい冬を乗り越えた。そんな環境の中で、少女はすくすくと健康に育っていた。
何度かは街に行き、食料を調達したり、必要なものを買った。だが、逃げてくるときに持っていた所持金はすぐになくなり、お金に困った少女は、得意の剣で用心棒などをやってお金を稼いだ。今も、その用心棒の仕事を終えて帰ってきたところだ。
少女は森の中に立てた、両親の墓の前に来ていた。
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