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「ひ……はふ……………た。も……れ………ない。」
風を切って自転車をこぐせいか声がうまく聞き取れない。
気になり、自転車を止め、声がした方向へと振り返る。
…が、人影が見当たらない。
ザワザワとなびく草木だけがそこにある。
気のせいだろうか…。
そう思い、再びペダルを踏もうとしたその時だった…。
『遥…今度ハ……。』
え…。
何…。私の名前…?どうして?今誰も居なかったよね…?
振り向いたらいけない気がした。本能が駄目だと警告する。誰も居ないその場所から聞こえるはずなんてない。
振り返り、無人を確認したからこそ有り得ないのだ。そこから声がし、まして自分を呼ぶなんて…。
じゃあ今聞こえた声は…?
手がじんわりと汗ばんでゆく…。
早くここから、立ち去りたい…。
しかし、なかなかペダルを踏み込めず前に進めない。それだけ動揺しているのか私は…。何に私は脅えてる…?
私はなぜこんなにも…。
その時、やっとペダルが踏み込め、その勢いにのり、全速力で学校へと駆け抜ける…。
早く。早く。早く。早く。
逃げなきゃ…。…でも何から逃げるの…?
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