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彼女の名前は美咲(みさき)。私が高校に入ってから知り合った友達。席も隣で1番仲がいい。明るい口調と、快活な振る舞いは男女問わず人気がある。
そんな美咲は私の顔を覗き込み、大きな瞳を輝かせている。
「あんた、ずっとブツブツ言ってたよ?」
「え…ああ。ちょっと怖い事あって…。考え事…」
「考え事ーは、いいんですけど、遥さん?もう教室に行かなきゃ遅刻なんですけど?」
校舎の時計は8時半を指す所だった。
「あ…やば。」
そう私が言って二人で走りだす…。
私は、校門を抜けた記憶がない。そんなに動揺してたのだろうか…。
ただ、美咲の顔を見たら不思議と怖かった気持ちが落ち着いた。人が近くにいる事がこんなにも頼もしい。
私は、現実に戻された嬉しさから、先程の事が頭から抜けていた。
いや…今思えば忘れたかったのかもしれない。
知らないふりをしたかった。
悲劇の幕開けを…私は知りたくなかったのだ…。
これから待ち受ける現実がどんなものかも知らずに、私はただ毎日がそこにあるのだと、この時までは思っていた…。
『悲劇は再び訪れた…。もう…戻れない…。』
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