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彼は、コウは連邦内で【幻の撃墜王】と呼ばれる時がある。それは彼が関わった、コロニー落下事故――勿論、事故では無いが――に起因していると云われ、そう呼ばれる度にコウの意識は何処か遠くに行ってしまう。
コウはそのたった一ヶ月の間に、好敵手を見つけ。
そして失った。
最後の最後まで勝てなかったそうだ。
アムロにも、不本意ながら好敵手は居て、一年戦争以来行方不明にはなっているが多分生きているだろう。つまり、その気になればまた戦えるのだ。
しかし、コウはそうじゃない。
だからなのだろうか。時々コウは達観したような、はたまた世捨て人のような――兎に角、軍人らしくない思考を働かせる。
これが、その思考回路なのかはアムロには判別は付かなかったが。
『じゃ、もう少し勝負しようか』
『・・・うん』
『そんな気持ちで居るなよ、僕まで引っ張られる』
『え、あ、ごめんアムロっ』
『いや?でもコウが僕に勝てるかな?』
『か、勝つさ!何時までも負けてると思うな!』
『なら、ポーカーフェイスが何かをいい加減覚えなよ』
『う・・・』
押し黙ったコウに苦笑しながらアムロはカードをきる。
そして配ればコウの顔が微妙に歪んだ。
・・・良いカード無かったんだな。ポーカーフェイスとは程遠い、つまりは何時ものコウの雰囲気に戻ったのを感じたアムロはホッと息を吐いた。
結局、朝まで勝負は続き、とうとうコウはアムロに勝てず仕舞いな上に、同じ同志で恋人と同じ会社に勤める女性に呆れ半分心配半分で怒られたのは、また別の話で。
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