不快余興~中編~

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何はともあれ、MS戦を行う方向で固まり、各々準備に――何せ、予定日は今日の午後だ――取り掛かり始めたのだが、此処でかなりの大問題が発生した。 『え、アムロ貴方、ジムに乗った事無いの?!』 格納庫に響き渡ったクリスの声に周りの人間が何事かと注目した。 コクリと頷くアムロだが、マニュアルがあれば何でも動かすよ、と暢気に云う。が、クリスは素早くインカムで、コクピットで作業をしているコウに連絡を入れた。 『え、ジム改のマニュアル?!』 コクピットで最終チェックを行っていたコウも、思わず素っ頓狂な声をあげてしまったが、即座に考え始める。 先ず此処、シャイアンにマニュアルがある筈が無い。このジム改はお偉いさんがわざわざ持参してくれた"中古"の機体なのだから。 すると、他の基地から拝借する事になるのだが。 『この近くの基地ってなると、殆どティターンズ系、だよな?』 『そうね。この州にあるのはシャイアンだけだケド・・・』 『でさ、ティターンズって今は新兵の育成に力、いれてるよな?』 『・・・・・・そう、ね』 『・・・・・・・・・貸して、くれないよな、絶対』 『・・・・・・・・・・・・』 思わずクリスは押し黙ってしまった。ジオン残党を血眼で狩る事に必死になっているティターンズの事だ。恐らく、この様なふざけた余興なんて一笑して終わりに違いない。 それに、コウから星の屑の顛末を聞いているクリスとしては、平気で味方を巻き込む様な指揮官の下で動いている集団に、マニュアル一つと云えども、絶対に頼りたくなかった。 残る道はコウの所属するオークリー基地からの拝借なのだが。 『オークリーから、は無理よね』 『・・・ごめん、行って帰って来たら約束の時間に間に合わない』 シャイアンはワイオミング州の南西の一番端っこに位置しており、対するオークリーは約千Km離れたアーカンソー州のミシシッピ川近くに位置している。 勿論、コウの友人であるチャック・キース中尉は基地内に居るが、まさか尉官(しかも自分より階級が高い)をこんな事で呼び出す訳にもいかない。 さあ、どうしようか。と二人が沈黙し始めたちょうどその時、シミュレーターでひたすらジム改を操作していたアムロが、機械からひょっこり顔を出した。
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