唯、一つ

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『貴方がアムロ・レイ?』 シャイアン基地内のグリーンスペースで本を読んでいたアムロは不意におちた影と、その台詞に顔をあげた。 太陽を背に自分の傍らに立つ女性はアナハイムの人間らしく、淡いスカイブルーの制服を着ており、赤みの強い長髪を微風に靡かせていた。 『・・・誰?』 一年戦争でニュータイプと云う未知の場所に到達し、戦いを終結に導いたアムロの顔は誰もが皆知っていたがその逆―アムロが知っている顔ぶれ等たかが知れている。 その顔ぶれの中には当然ながら、目の前に居る赤毛の女性の顔はなかったし、重力下におりて随分鈍ってしまった―それでも人以上には鋭い―感覚を研ぎ澄ましてみるが、やはり見知った人ではなかった。 『私?クリスって呼んで』 クリス―そう名乗った女性はふわりと微笑む。しかし、アムロはその笑みに、無意識に隠された別の感情を見つけてしまった。 ――軍人特有の、笑み。 『・・・退役軍人が何の用ですか』 そう云い放ち、本に視線を戻せば息を呑む気配がした。 ・・・自分が温厚な部類の人間見えたのだろうか、とアムロは少々白けながらぼんやり考える。 だとしたら、期待するだけ無駄なのだ。 しかしクリスの気配は直ぐに苦笑に変わり、しゃがみ込んできた。 普通ならば期待ハズレだと云わんばかりに去っていく人間しか見た事が無いアムロは内心驚く。 そして、その後に続く言葉にますます驚いた。 『ごめん、なさい』
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