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『勝ち逃げ、は嫌いだ』
ポーカーに熱中していたら日付を越えたために、アムロがこの勝負で終わろうと提案すると、コウは苦々しく息を吐き、冒頭の台詞を呟いた。
確かに、二桁に及ぶであろう勝負は全てアムロが勝っており、単なる負け惜しみにしか聞こえない台詞ではあったが、そう受け取れなかったアムロは軽く瞬いた。
二人きりの小さな空間にしばしの沈黙がおりる。
余談だが、この場に第三者が居れば、ニュータイプであるアムロにオールドタイプのコウが勝てる訳が無いと何の根拠も無しに喚くだろうが、コウの全敗理由は単に素直に表情が顔に出るからだ。
仮面か袋か何か被った方が良いんじゃないの?と笑いながら進言したとある女性MS乗りが居る位、顔に出ている。
『何でかな、コウ』
――兎に角、言葉外の感情を的確に感じ取ったアムロはチップを積みながら、コウにのんびりと問うた。
アムロのフラグにしか見えない積み方に驚きながらも、コールしたコウは――時々、ふと見せる――何処か遠くを見つめる顔付きになり、ぽつりと呟く。
『勝ち逃げされたんだよ、手の届かない処まで』
その台詞に、ああとアムロは妙に納得した。
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