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「俺の父親は会社の社長なんだ」
グラスに目線を落としながら話し出す。
「親父の会社に就職して、俺を次期社長になんて言ってたんだけど」
男は静かに耳を傾けている。
「ゲイってことがバレて、事情が変わった。世間体を気にする親父にとって、俺は厄介者らしい」
グラスを持つ手に少し力が入る。
「それでも親父の会社に就職することはもう決まってたことだし、仕事とプライベートは分ける男だからさ」
「……」
「ただ次期社長は弟なんだって。今日聞かされた」
グラスを両手で握りしめる。
「別にそんなのはいいんだ。興味ないし。…ただ…何かさ…」
声が微かに震える。
会ったばかりの男に、何でこんなこと話してんだろ。
でも、この人なら、真剣に聞いてくれる気がしたんだ。
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