嫉妬

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「ちょっ、來斗さん!」 暴れる剛を無視して寝室に連れて行き、ベッドにドサッと下ろす。 「ま、待ってよ!冗談でしょ?!」 「んなわけないだろ。俺は本気だ」 後退りして逃げようとする剛に、にじり寄っていく。 「だ、だって!來斗さんは、俺のこと好きなわけ!?」 「……」 その言葉で、動から静へ、空気が移り変わった。 「好きだよ」 「……え」 バカで単純で人ん中土足でズカズカ入ってくるような奴、初めは認めたくなかったけど、 素直で純粋で真っ直ぐなお前に、気付いたら惹かれてたんだよ。 悔しいけどな。 「だいたい好きでもない奴にキスなんてするかバカ」 「なっ…ん!」 文句を言おうとする唇を塞ぐ。 余計なことを考える時間を与えないように、さっきより長く、深く。 すると途端に大人しくなり、躊躇いがちにまたそれを受け入れていった。 「來斗さん…」 「ん?」 「…好きだよ」 「……」 真っ白で、まっさらで、真っ直ぐで、 心にスッと入ってきて、たまらない気持ちになる。 嬉しいと、素直に感じる。 「…ああ。分かってるよ」 こんなにも好きって言葉が、優しく響いてくるなんて。 何だかくすぐったくて、たまらなく愛しくて、俺は剛を抱きしめた。  
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