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「來斗さん…?」
着替えていると、剛が目を覚ました。
「あ、悪い。起こしたか?」
上着を着ながらベッドへ向かう。
「…來斗さん、仕事?」
「ああ。お前はもう少し寝てな。今日は休みだろ?」
「……うん」
頭を撫で、名残惜しくドアへと歩き出す。
「あっ!」
「え?」
「………」
剛は開きかけた口を閉じ、寂しそうな顔をした。
「……」
何を言おうとしたのか、その表情で察しがついた。
俺は再びベッドまで行き、腰かけた。
「…今日はゆっくり休め。疲れてるだろ?」
「……」
頭を優しく撫でる。
いつも元気な剛が、今日は一段としおらしくなっている。
「來斗さん」
「ん?」
突然手を握られて、一瞬ドキッとした。
「早く帰ってきてね」
「……」
僅かに力を込め、真っ直ぐ見つめられる。合わさる手のひらから感じる体温が心地良い。
剛の気持ちが伝わってくるようで。
「…ああ」
頷いて、ゆっくり、触れるだけのキスをした。
本当は、今すぐ抱きしめたかった。
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