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「…やっぱりお見舞の品くらいは持って行った方がいいかな…?」
ふと思ったことなのだが、一度考えたら止まれないのが彼の長所で短所だ。とりあえず近くのコンビニでゼリーを買って再度病院へと向かった。
「しまった…」
病院までの道には問題はなかった。しかし、空葉は今になって最大の問題を抱えることになった。
時刻は七時半。つまりまだ病院が開いていないのだ。
仕方なく病院のベンチで桜を眺めることにした。
(やっぱりキレイだなぁ…)
自分の家のものとはレベルが違う。この桜は神木とか言われそうなレベルだ。
(でも僕…なんでこんなに…)
不意に頭に浮かんだのはとある疑問だった。
【自分は何故こんなにも彼女に会おうと必死なのだろう…】
というなんでもないような当たり前の考え。
しかし、この時に答えがでることはなかった。
考えが中断されたのだ。
桜吹雪になびく栗色の長髪の少女によって。
「あ!おはよう恋ちゃん!」
「おはようございます!…来てくれたんですね…」
「あ~来ないと思ったんだぁ?」
ある意味当然の考えだろう。
ほとんど見ず知らずの人間が明日もくると言った所で信用するには材料が少なすぎる。
ところが、その考えを裏切り空葉は来てくれた。
少しでも疑ったことを申し訳なく思った恋はうつむいた。
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