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待合室――
(だるいなぁ~。バカは風邪ひかないって誰かが言ってなかったかな…あれは嘘だね。)
そんな事を考えていると空葉の名前が呼ばれた。
「空葉くん?あなたの番よ~」
さすがに幼い頃から通っているだけあって看護士の人も顔見知りだ。適当に返事をしてふらつく足をおさえ、診察室へと向かった。
「あら?空葉じゃない!」
この病院の医者が彼女、青山紅葉だ。昔は紅葉の母がやっていたが、今は彼女が跡を継いだ。空葉の8つ年上の27歳だ。
「ん~風邪ね!当ててあげようか?夜桜でもみながら外で寝てたんでしょ!」
「うっ…するどい…」
「作家が体調管理くらいできなくてどうするの。気をつけなさい?」
「はい…」
そう、少々ヌけている彼だが作家という職業についていて、それなりに売れている。
「ねぇ…?もう可奈ちゃんの事…」
「…………」
可奈。その名が出た途端、空葉の顔から笑顔が消えた。
「ごめん。時間かかるわよね…」
「ううん!さて、薬って…苦い?」
「特別苦いのをだしてあげるわよ!」
「うぅ…いじわる…」
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