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空葉は軽い会話を交わし、薬を受け取り、この病院の庭にある大きな桜の下のベンチに向かった。
ここのベンチで仕事をするのが彼はとても好きだった。
しかし、今日は珍しく先客がいた。
キレイな栗色の髪を風になびかせてただずむ自分と同い年くらいの少女だった。
誰とでも仲良くなろうとする空葉は当然のように近づいて話しかけようとしたが2、3歩近づいたときに不意に少女が苦しみだして激しく咳き込み、ベンチに倒れた。
空葉は駆け寄った。
「大丈夫!?しっかりして!…くそっ!」
空葉は少女を抱えて走り出した。この時間、診察は一時止まっている。しかしこの少女は患者用の白い服を着ている。つまり、ここの患者のはずだ。
なんの遠慮もなく、空葉は紅葉の居る診察室のドアを叩いた。
少女の息が荒い。
「は~い?」
「紅葉!この子が!」
昼食をとっていた紅葉は空葉が抱えている少女に目を移すと血相を変えて叫んだ。
「みんな!恋ちゃんの発作よ!」
院内に緊迫した空気が流れた。
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