揺れる想い

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「なぁテル、何でお前は恋人を作らね~んだ?」  まだ春かぐわしい五月の初旬。  とある学校の教室、一人の男が淡いピンクの花びらが散ってしまった桜の木に、新しく芽生えた緑の新芽を切なく見つめながら、そばの席に座っている男子生徒に聞く。 「別に、俺は彼女なんて欲しくないだけだ」  もったいね~な。  俺なんかより顔や勉強、それから運動もいいのによ……。 「そういうお前はどうなんだ冬路。恋とかしないのか?」 「俺か? ……俺は恋なんてしね~よ。だって《俺の命は後もって一年》だぜ。来年の満開の桜だって見れないかも知れないのに恋なんてやってられね~よ」 「まだわからないだろう? アメリカに行ったら治るかも知れないのに」 「アメリカなんて治療費が馬鹿みたいにかかる国に行ってまで俺は生きようとはしない。俺はこの桜のようにただ季節が過ぎていくのを待つだけさ」 「好きな奴はいるくせに?」  男――俺の親友のテルの一言に俺は深いため息をついてテルの方に振り返る。  何でこいつは言うのかな~。  せっかく忘れようと必死になってるのに。
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